消費税が導入されて以降、その税率は導入時の3%から5%→8%→10%と段階的に引き上げられてきました。さらに2021年4月1日からは総額表示が義務付けられるようになり、消費者が支払う総額を表示しなければならなくなっています。しかし越境ECでは消費税がかかりませんので、表示を変更する必要が出てくる点に注意が必要です。
消費税は日本国内で発生する取引に課される税金のことをいいます。越境ECにおいては海外居住者に対して商品を販売することから、日本で適用される消費税は発生しません。海外に販売する商品が課税の対象外になることを「輸出免税」といいます。
海外向けに商品を販売する際、顧客が購入する代金の総額は「商品代金」「送料」「関税」「付加価値税(消費税)」の合計額が基本になります。日本における消費税は前述の通り国内取引のみが課税対象となりますが、アメリカでは売上税・インドではVATなどといったように現地によってそれぞれの税制度が適用されることになります。そのため、ECサイトにおいてはこれらの国際税に関する記載も必ずしておくようにしましょう。
消費税は売上として預かった税額から支払った仕入れなどの税額を差し引きした残りを納付するという計算方法になります。越境ECの販売においては預かる消費税が発生しない一方、仕入れや経費で支払った税金は発生することになるので差し引きした結果がマイナスになることがあります。差し引きした結果がマイナスになる場合、消費税は還付を受けることができます。ただし課税事業者としての届け出をしておくなど手続きを含めた要件を満たす必要がありますので、事前に調べておきましょう。
Shopifyの越境EC を運用するにあたっては、海外のユーザーに対する表示を消費税抜きにする必要があります。実際にShopifyで設定する場合には管理画面→設定→税金で設定を行うことができますので、確認・設定をしておくようにしましょう。
具体的には「税金」のページで画面内にある項目「すべての価格を税込価格で表示する」にチェックを入れておくことで総額表示に対応する形になりますので、チェックが入っているかの確認をしておきましょう。そのうえで同じく「税金」のページにおいて「お客様の国に基づいて税金を含める、または除外する」のチェックを入れておくことにより、国内の顧客に対しては税込の総額表示が、国外の顧客には税抜金額の表示がされる設定になります。どちらか一方のチェックを入れた際に反対のチェックを外してしまわないよう、しっかりと確認しておきましょう。
また、配送先に応じて税金を設定する方法も紹介します。こちらも同じくShopifyの設定画面から設定を行うことになりますが、これらはアメリカ、カナダ、欧州連合、イギリス、ノルウェー、スイス、オーストラリア、ニュージーランド、またはシンガポール以外で販売をしている事業者向けの機能となっています。ただしその配送先によって税に関する取り扱いは異なることから、管轄の税務当局または地元の税理士に相談しながら、税金を適切に申告できるよう確認しておきましょう。
ロケーションに基づく税率設定をShopify上で行う場合、設定画面から「税金と関税」に移動をし、税の地域セクションから国名をクリックして設定を行います。また、いくつかの地域では配送料に課税する必要がある場合がありますので、同じく「税金と関税」の画面より「配送料に課税する」にチェックを入れるようにしましょう。
消費税還付を受けるためには要件を満たしたうえで然るべき手続きを行う必要があります。基本は税理士にお任せしている、という方も多いと思いますが、知識として知っておく事をおすすめします。なお、事業者には「課税事業者」と「免税事業者」があります。一定の要件を満たす事業者であれば「免税事業者」を選択することが可能であり、消費税の納税義務がありません。一方で還付を受けることができませんので、消費税還付を受けるためには「課税事業者」を選択しておく必要があります。
また、消費税の課税方法には「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります。このうち「原則課税」は売上などに含まれる消費税額から仕入などで支払った消費税額を差し引いた金額を納付する方式であり、「簡易課税」は消費税計算が非常に簡易的なものとなっています。この「簡易課税」は売上などに含まれる消費税額に対して業種ごとで異なる「みなし仕入率」を乗じることで納付すべき消費税額を算出します。この「簡易課税」を選択するためにも一定の要件を満たす必要はありますが、場合によっては「原則課税」よりも納税額を抑えることができるというメリットを得られることがあります。しかしながらこの「簡易課税」では消費税還付を受けることができませんので、還付を受けたい場合には「原則課税」を選択する必要がありますので注意しましょう。
消費税の申告は個人事業主であれば翌年の3月31日まで、法人であれば事業年度が終了してから2か月以内に行う必要があります。多くの方は税理士に依頼することになると思いますが、必ず忘れず行うようにしましょう。なお、提出書類としては「申告書第一表 消費税の還付申告に関する明細書」「課税標準額等の内訳書」「税率別消費税額計算表 兼 地方消費税の課税標準となる消費税額計算表」「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」などといったものを用意する必要がありますが、これらの書類の作成は非常に煩雑であることから、やはり税理士に依頼することをおすすめします。さらに、消費税を支払ったことを証明する資料である請求書や納品書、領収書などの根拠資料は申告時に提出する必要まではありませんが、求められた場合にすぐ提示できるようしっかりと保管しておく必要があります。
また、2023年10月からはいわゆる「インボイス制度」がスタートしています。この制度は仕入税額控除をするためには「適格事業者登録番号」が記載された請求書(インボイス)を保管しておく必要があるという制度です。従ってこの「適格事業者登録番号」が記載されていない領収書や請求書に対して支払ったものに関しては、仕入税額控除を行うことができません。多くの法人は取引環境維持のために登録を行っていると思いますが、個人事業の場合には登録していないケースもあります。したがって個人事業主からの仕入を行っている場合には確認しておくことをおすすめします。
一定の要件を満たして消費税還付を受けられる事業者は、必要な書類を揃えて所轄の税務署へ提出することで手続きを行うことができます。提出期限に関しては先述した通り個人事業主であれば翌年の3月31日まで、法人であれば事業年度が終了してから2か月以内となっていますので、消費税還付を受けたい場合にはこの期限内に書類の提出など必要な手続きを済ませるようにしましょう。申告方法としては書面を税務署に持ち込んで行うほか、郵送や電子申告などさまざまなものがあります。
なお、消費税の還付申告を行ってから実際に還付金が入金されるまでには一定の期間を要するケースがほとんどです。特に2月から3月にかけては個人事業主と12月決算の法人の申告が重なることから税務署側も繁忙期になるため、1か月から1か月半程度かかってしまうこともあるようです。e-Taxによる還付申告を行う場合には3週間程度で受け取れるケースもあるようですので、電子申告に対応している税理士に依頼する、もしくは自身で電子申告を行うなどするとスムーズに還付を受けられるでしょう。ちなみに還付金の受け取り方法は預貯金口座への振込、もしくはゆうちょ銀行窓口での受け取りから選択することになります。預貯金口座への振込に関しては申告者本人名義の口座に限られており、一部のネット銀行は取り扱いがないこともありますので注意するようにしましょう。
税金関係の処理や手続きは非常にややこしく、法改正なども含めると素人が理解しきることは非常に難しくなっています。そのため会社経営をしている方であっても税理士に丸投げという方が多いのではないでしょうか。
Shopifyを取り扱っている事業者であれば越境ECに関するさまざまなノウハウを保有していることがありますので、新規事業として取り組む方は特に「失敗しないためのベストパートナー選び」を重視して取り組んでみてはいかがでしょうか。
■フルバランス参照元
※1 株式会社フルバランス公式サイト(https://fbl.jp/)より、2017年以降構築の全クライアントを対象に2021年5月〜2022年4月の売上成長率から平均値を算出。
※2 参照元:株式会社フルバランス公式サイト(https://fbl.jp/)より、2022年6月時点でのShopify公式コミュニティのランキング
(Shopify 技術的なQ&A https://community.shopify.com/c/技術的なq-a/bd-p/tqa-jp )
■選定基準
Shopifyの公認パートナー「ShopifyExperts」「ShopifyPlusPartners」(2022年6月時点)である105社※1のうち、
①公式サイトに構築事例の記載があること(2022年6月時点)
②Shopifyに関する専門書籍を発行している※2こと
を満たし、かつ、ECサイト構築の専門家としてユーザーの課題解決に必要な3つの軸を下記に定義し、それぞれに強みのある会社として3社を選定。
※1 参照元:Shopify公式サイト(2022年6月時点) https://community.shopify.com/c/総合的なディスカッション/日本のshopify-expertsとshopify-plus-partnersの一覧/td-p/722989
※2 Amazonで「Shopify」と検索してヒットする有料の書籍のうち、著者がShopifyの構築支援を行っている企業・団体に所属していることが明示されており、判断できるもの。(2022年6月時点)
※3 参照元:Shopify公式フォーラム(2022年6月時点) https://community.shopify.com/c/kudos/leaderboardpage/category-id/jp/timerange/all/tab/authors